自動生成やパーマデス(一度死ぬとすべてを失う)など、さまざまな要素が絡み合い、何度遊んでも楽しむことのできるゲームジャンル「ローグライク/ローグライト」。今回の「げむすぱローグライク/ローグライト部」第22回では、IGNITION Mが開発を行い、holo Indieがパブリッシャーを手がけるローグライトアクション『MYRIAD DEATH(ミリアッドデス)』をご紹介します。
『MYRIAD DEATH』とは

本作『MYRIAD DEATH』は、2021年にIGNITION Mが開発したローグライトアクションゲーム『ラズベリーマッシュ』をベースとし、ホロライブEnglishに所属するVTuberグループ「Myth」をフィーチャーしたタイトルです。

本作の主人公を演じるのはVTuberの「森カリオペ」さん。死神ながら人間界でVTuberとして活躍する彼女でしたが、彼女の出身地である冥界に「神」を名乗るものが現れ、冥界が大混乱に陥ったことから、彼女の師匠であるデス先生によって冥界へと呼び戻されます。しかしながら、冥界に呼び戻された衝撃で彼女は記憶喪失となってしまい、「神」を倒すために、そして彼女自身の記憶を取り戻すために冥界での戦いに身を投じます。

ゲーム自体は見下ろし型のオーソドックスな弾幕ローグライトアクションです。プレイヤーは近接武器と遠距離武器を組み合わせ、各フロアの部屋に巣食う敵を薙ぎ倒し、フロアの終端に待ち構えるボスを倒して冥界の奥へ奥へと進み、「神」と対峙することを目指します。しかしながら森カリオペさんをはじめとしたMythメンバーを再現したピクセルアートや、ラッパーとしても活躍する森カリオペさんの楽曲が流れる中でゲームを進めていく点が本作で異彩を放つポイントです。
ラップに乗って敵に先制、薙ぎ倒す刀まるで剣聖、蜂の巣にされて無事で済んで?

冥界にはゾンビやオークなど、無数の敵が溢れています。それを近接攻撃や、遠距離攻撃で薙ぎ倒していくのが本作のメインアクションです。主にザコ戦では敵に自動で接近し、ガンガン追撃を入れることができる近接攻撃で敵を倒していくことになるでしょう。
本作は敵を倒すとガンガン血が飛び散り、フィールドには切り刻まれた敵の死体が残る……意外とバイオレンスな作風なのですが、それが本作全体で採用されているラップ・ミュージックと妙な調和を見せています。フィールド上の障害物も近接攻撃で敵ごとまとめて吹き飛ばすことができ、そこから大量のコインや回復アイテムが手に入るのも気持ちいいのです。

ボスクラスの敵や、銃を持った敵は弾幕攻撃を仕掛けてきます。こうした敵には迂闊に近接攻撃をかけると弾に突っ込んでしまうので、装備している遠距離攻撃をぶち込みましょう。なお、「遠距離攻撃」と一言に言っても単純に実弾を打ち込むものから、レーザービームを放つもの、敵を貫通するチャージビームを放つもの、ランチャー型でミサイルを打ち込むものなど、多数の武器が用意されています。

遠距離攻撃だけでなく、近接攻撃武器にも多数の種類があります。なお、一部の近接武器にはキャラクターの外見をMythメンバー(小鳥遊キアラさん、一伊那尓栖さん、がうる・ぐらさん)に変えるものも用意されています。キャラクターの外見が変わっても性能やステージで流れる曲自体は変わりませんが、ボイスが異なっているので色々試してみるのも良いでしょう。
なお、本作で登場する武器には「ノーマル」「マジック」「レア」「レジェンダリー」のレアリティがあり、基本的にレア度が高いほど追加効果が多く強力です。近接武器に関しては移動量と攻撃範囲が強く、かつHP回復エンチャントが付いているもの、遠距離武器はチャージや頻繁なリロードが必要なものよりも、DPSの高い連射性能に優れた銃が使いやすいというのが個人的な印象です。

本作の難易度は決して低くはなく、中盤以降のボス敵は苛烈な弾幕も放ってきます。道中や商店でHP回復薬を手に入れることもできますが、数が限られており、また回復薬の使用中はスキが生じるため、タイミングを見極めて使用する必要があります。

冥界の奥までの道のりは厳しく、慣れるまでは何度も力尽きることとなるでしょう。

しかしながら、当然ながら本作にもローグライト系アクションゲームにはお約束の「繰り返しプレイすることで得られるリソースを消費して、キャラクターを永続強化する」という仕組みが用意されています。インベントリを拡張し、多数の強力なアーティファクトや回復薬を持てるようになることで、冥界を突破できる可能性はより上がることでしょう。
ただ、本作にはアーティファクト・回復薬の所持数の強化や登場武器・アーティファクトの解放という要素はあるものの、キャラクターの基本性能自体は強化することができないので、道中の立ち回りには常に気を払う必要がありますし、強い武器を手に入れられるかどうかの運も大いに絡みます。

なお、本作をローグライトアクションゲームとしてみた場合、個人的に気になる点が2つあります。1つは「各種アクションやその硬直をドッジロールでキャンセルできない」という点。いわゆるアクションゲームでの「緊急回避」にあたるドッジロールは本作にも用意されていますが、近接武器・遠距離武器の攻撃モーション中や攻撃後の硬直をドッジロールで回避できません。近接武器の攻撃連発で調子よく進めてきたところに敵弾が!危ない!ドッジロールで回避……という事ができないのです。
このため、特にボス敵相手に近接武器を振る際はボタンを連打せず、安全に殴れる回数を把握してドッジロールが確実に行えるようにする……という心構えが本作では必須です。これはこれで緊張感を高めるのに一役買っている仕様ではあるのですが、例えば『モンスターハンター』のようなアクションゲームでも攻撃後の隙をローリングでキャンセルするといった動作は基本テクニックであるため、そういった方面のアクションゲームに慣れていると本作の緊急回避の使用に違和感を受けるかもしれません。

攻撃手段として用意されている「ボム」も、ドッジロールと同様に他の攻撃モーションをキャンセルして放つ……という事ができません。2Dシューティングゲームでは「ボム」はいざという時の緊急回避(あるいはどうしようもない攻撃が来ることがあらかじめわかっているときの決め打ち)として使われることが多いですが、本作の仕様では「ボム」を緊急回避として使うことが困難です。このあたりは他のシューティングゲームのボム的に使えてもいいと個人的に思うのですが……。

本作にはベースとなったゲームがあるということもあって、「ローグライトアクションゲーム」としてはやや古い完成度の印象は正直言って否めません。しかしながら、かわいらしい女の子を主人公に、クールなラップ・ミュージックに乗って敵を血みどろに薙ぎ倒していくという本作の経験は、他のゲームでは得られることのないものです。VTuberファンに限らず、是非とも1度この体験をしてみて損はないかと思います。フィメールラップとアクションゲームって、意外と相性良いものですよ。
なお、Game*Sparkでは吉田輝和氏による本作のプレイレポートも掲載しています。筆者も本作をエンディングまでプレイしましたが、一度もYAGOOさんに会わなかったんだけど!?なんで!?
『MYRIAD DEATH(ミリアッドデス)』は、PC(Steam)にて1,200円で配信中です。